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素人の戯言-北海道クローズアップを見て思ったこと

北海道クローズアップ(NHK総合 5/15放映)を見て思ったこと。

馬産地日高の実情をクローズアップ、という内容だったが、8大競争の一部と自前のマイルCを中継している局だけあって現状をつぶさに捉えるという部分についてはまずまず及第点。専門用語についてもわかりやすい使い方をしていたし。

不満が残ったのは、本当に日高の現状をストレートに描いただけ、だったということ。
取り巻く環境や、彼ら自身の抱える問題点を掘り進めていかないと事の本質は見えて来ない。

何故、日高の馬が売れないか。
カンタンだ。馬主が買いたいと思うような馬がいないからだ。
-その理由は?
バブルの、4つ脚で健康でありさえすれば(現実にはそうでなかった馬もいたようだが)どんな馬でも売れた時代のツケ、と言っても過言ではない。少なくとも私はそう思う。

GCのプログラムで過去の様々なレースを目にすると、現在のそれ、との大きな違いに気付く。
あの、黄色に黒の縦ストライプ、もしくは黒地に赤のバッテン、の勝負服の、1つのレースにおける占有率に著しく差があるのだ。
先日のマイルC、1~4着までを社台G生産馬が占めた。
昨年の秋華賞に至っては出走18頭のほとんどが社台の生産。1、2着馬こそ日高の生産馬だったが、その種はどちらも社台スタリオンのそれ。
生産が日高、父も日高。でもBMSがサンデーサイレンスだったりノーザンテーストだったり、とどこかで社台Gという存在にリンクしている馬がどれほど多いことか。

日高でだって名馬は数多く輩出されている。
古くはトウショウボーイ、オグリキャップ、最近ではテイエムオペラオー等々。
だが、今や馬主は言わずもがな、ファンだって知っているし、十二分に刷り込まれてしまっている。
強い馬は、今、主に社台Gが生産している、ということを。

何故社台Gは強い馬を送り出すことができるのか。そして生産馬が売れるのか。
初夏のセレクトセール(当歳馬の競り)でも、社台というブランドがついていれば確実にその価格は上がる。

これもカンタンだ。
それだけの投資をしているから。それだけのこと。
放牧地の管理、馬の健康管理-自前の診療施設はJRA並み-、顧客へのサービス-種牡馬のパンフレットはあたかも写真集-など挙げれば枚挙に暇がない。
導入した種牡馬が連続して当たったことも大きな要因だが、それで得た莫大な資金を設備、肌馬にきちんと反映させていく。その結果が今に繋がっているのだ。
実際に社台Gの数多ある牧場を見学してその施設、設備に驚かされた方も少なくないだろう。
馬を売る、ということを強く意識して、放牧地はもちろんのこと、敷地のあちこちを美しく整える。
そんなことを心がけている牧場が日高の中に幾つあるだろう。
古く、朽ちそうな厩舎と、雑草も目に付く何年も更新していないだろう放牧地に放されていても馬は馬、だ。
それでも、じゃあどちらから馬を買うか、と聞かれたら?
血統も価格もそれほど変わらないとしたならば、答えはおのずと出てくるというもの。

放牧地については、これはもう見た目の問題だけではない。
土地は、継続して使っていれば必ず涸れていく。
土壌に含まれる微量要素は自然には再生されないから、定期的な更新と、休養期間を設けることをしなければ、良質な牧草を馬に食べさせることはできない。
金がないから、土地の更新もできない。勢い草もろくすっぽ生えていない放牧地に馬を放さざるを得ない。
結局行き着くところは経済力、なのだろう。
でも、明らかにあったはずの馬産地バブル。その時期飛ぶように売れた馬の代金はどこにいったのか。
…生産頭数の増加。経営規模の拡大。
身の丈に合った生産を続けていれば、もっと質の良い、それこそ強い馬を生み出すことだって可能だったのかもしれないが、質よりも量産に走った。その結果が今日に繋がった。
当たり前のように農協へ借金を重ね、抵当の土地や厩舎以上の負債はもはや返済のしようもなく、恐らくその意思もないと思われる生産者も少なくないと聞く。
悪循環。
借金が首を絞める。でも廃業しても借金は完済できない。だから馬産を続けざるを得ない。
他にできることもない、番組の中でも生産者がそう答えていたとおり、馬産は手をかけようと思えば幾らでも手をかけられるし、その逆もまた然り。
その結果は何年後かに如実に競走成績、という形で反映されるのだ。
それでも規模の小さい生産牧場から突如として重賞勝ち馬が現れる。
それは様々な努力を重ねて得た結果かもしれないし、あるいは全くの偶然の産物かもしれない。
どちらの理由であっても、いつか自分も、と期待感を抱いてしまってもおかしくない。
そして、その期待感こそが諸刃の剣であると言っても過言ではないだろう。

このまま社台Gが一人勝ちしていくようなことになれば、日本の競馬そのものが面白味を失う、ファンの興味を削ぎ、競馬自体が衰退する。そんな意見を見聞きすることがあるが、私はそうは思わない。
売り上げが減少傾向にあるのは日本の経済情勢にリンクしているからだろうと単純に思っているし、来場者数が減っているのはPATの普及が著しいからだろう。
今だって十分に利益があるのだから、JRAはこれ以上の収益を上げたければ自分たちが衿を正して組織のリストラクチャでも図ればいいのだ。
社台の生産馬とマル外ばかり。それでもレースさえ面白かったら、強い馬同士の激しい闘いが観れるのだったらその馬の生産地がどうであってもファンは喜ぶと思うけどな。
社台の生産馬ばかり、と言っても、日高で生産された名馬たちが繁殖牝馬や種牡馬として繋養されていたりするし、これだけ代を重ねていけば、あの馬は○○の兄弟、とか××の近親、とかそれなりに血のロマンとやらも生まれてくるだろう。牧場見学だって早来や千歳だけで済むというもの(ほとんどの繁殖牝馬は見学させてもらえないらしいけど)。

これは極論かもしれないけれど、社台Gと、日高でもある程度の規模と経済力を持つ牧場だけが生き残っていけばいいと私は思う。
それなりの規模の牧場同士が手を組んで防衛策を講じることも確かに効果的かもしれないが、「馬をどうやって売るか」だけでなく、「売れる馬をどうやって作るか」、を第一に考えてほしいと切に願う。
もちろん様々な工夫を凝らして強い馬作りのため日夜努力している小規模の牧場もあるだろう。
だが、その努力が必ずしも報われることがない、それが馬産であることも残念ながら現実なのだ。

この番組も、結局「馬を売れない」いう側面から切り口を見出して製作したため事の本質まで深く進めていくことはできなかった。放送時間が短いから仕方ないかもしれないが消化不良の感は否めない。
いつか時間をかけてじっくりと、馬産地の実態を取材してほしい。
競馬という上っ面しか見えない私たちファンに果たしてアンダーグラウンドとも言える生産地の実態を知る意味があるのかどうかはさておき、せっかくだから客観的に日高の馬産における問題点や改善策を考えてほしい…って大きなお世話ですね。すみません。

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