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治療島@このタイトルはいかがなものかと思うんだけど

その本を読み終えた時、私は自分が川上弘美でも児玉清でも、あるいは中江有里でもないことを呪った。
どうしたら、この読後感を言葉にできるのだろう。もどかしいったらない。

病院の待合室が混雑していたことをこれほど幸いと思ったことはなかった。
出掛けに何気なく手にしたのが、先週図書館で借りたこの本。
診察を待つ間に前半を読み終え、会計と投薬(医薬分業ではない病院なので)を待つ間に後半、更に駐車場に停めた車の中でエンディングを最後の一文字まで目で追い切ったのだが、そのまま暫くの間発進させることができなかった。

訳者(著者はドイツ人)のあとがきにもあるとおり、何をどう書いてもネタバレになってしまうという、至るところトラップとトリックと伏線だらけのお話は、二転三転してラスト、思いも寄らない帰結点に到達する。
かつて、かの名作「そして誰もいなくなった」のラスト、真犯人のモノローグを何故か読まずに本を閉じてしまい、母に教えられてそこを読むまでの数ヶ月間犯人がわからずにいたという大ボケをかましたことがあるのだが、この本もエピローグが重要だ。これを読まずに終えてしまうと全てが水泡と帰す。
いや、本当に驚いたし、全くといっていいほど思いも寄らなかった真実を目の前に突きつけられて突然現実に引き戻されたような、そんな気さえした幕引きだった。

「治療島」セバスチャン・フィツェック著/赤根洋子訳 柏書房 1500円(+税)
※ある日突然、精神科医の愛娘が消えた。その4年後にはじまる不気味な《治療》(帯から引用)

既に映画化が決まっているそうだ。
著者は放送関係の仕事をしている、とのプロフィールを見て納得した。確かに全てのシーンが文章から立体的に映像として浮かび上がってくる。
血の赤、猫の青、鈍色の海…主人公がとあるキーパーソンと対峙するシーンも、ディテールの一つ一つが鮮やかに脳裏へと浮かび、ページを繰る指がたたらを踏むように焦ってしまった。そう、早く先が読みたくて。

ただ、読後感はすっきりしない。
タイプで言えば、そう、野沢尚さんの作品に近いものを私は感じた。
絡んだ糸は解けたけれど、先端がちぎられていた、そんな感じ。

あまりに仕掛けが多いので、時間に追われないためにも購入してからじっくりと何度か繰り返して読むことをお薦めします。(私も買います)

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