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ドラマ2題

大抵の場合、原作本に感銘を受けてから映像化された作品を見るとガッカリする。あくまで私の個人的感想だけれど。

その代表格が『風が強く吹いている』で、映画のラスト、復路ゴールシーンでのハイジの描写が全てをぶち壊してしまったのを見て、それまでの涙が一気に引いた。
これは原作云々ではなく、小出クンのバーターだろう若手女優のあまりの大根加減にも失望させられたけれど。

東日本大震災関連のドラマ、NHKで2夜に渡って放送された『絆-走れ奇跡の子馬』はというと・・・これがまた、映像が原作を凌駕する、というある意味これこそ奇跡、ではなかっただろうか。

そもそもの原作は競馬関連サイトにおいて連載されていたもので、著者は長年競馬に関わっていたとは思えないくらい、ことが都合よく運び、恋愛事情まで絡んで内容としては薄いといってもいいものだった。
それが、だ。ドラマ化にあたって、主人公は若者から息子を失う苦悩の壮年男性に替わり、そこに娘、妻との家族間の齟齬などが付加され、キャスティングも相俟って非常に重厚長大な物語へと変貌を遂げてしまったのだ。

その連載は大幅加筆を経て単行本化されたそうだが、果たしてどの程度ドラマに近づいたのかな?買う気もないからわからないけれど、少なくともあのドラマを見て感動した人がオンラインでの連載を読むことはお勧めできない、と私は思っている。

でも、原作者さんはとても上機嫌で嬉しそうだったなあ。あれだけ内容を改変させられてしまっても、原作としてドラマで名前がクレジットされて、恐らく著作権料というか使用料が入ってくればいい、そういうものなのかな。外野にはわからないけど。

ちなみに、感動的なドラマではあったが、馬のシーンにはいくつか不満点はある。
哺乳瓶での授乳のやり方、とか、当歳が走らないからなんとか走らせたい(これが伏線となるわけだが)と思っていたら、東京に帰ろうとする娘の後を追って初めて走る、とか、小首を傾げたくなる描写にはまあ目をつぶるとしても、最大の問題点はその馬の新馬戦!

・・・ゲートを出たら、停まってしまったのだ。走らない。何だそりゃ。
そこで主人公一家が馬の名を叫び、声援を送る、『走れ!』と。それを聞いてゆっくりと走り出す馬。おい。

・・・まず、発走調教再審査は間違いない。タイムオーバーにもなるし、合わせ技で下手すりゃ1ヶ月あるいはそれ以上の出走停止処分の後、競馬場でのゲート再審査となるはず。
更に言えば、この馬がその後大きいところを狙えるかというと・・・難しいような気がするけれど。

ちなみに、原作ではこの馬、既にGⅠを2つ勝った状態でダービーのゲートに入るところで終わっている。荒唐無稽。ドラマの方が地に脚がついているけれど、それでもこれだもの。

で、原作に忠実という点では両極にあるといっても過言ではないのが、テレ朝でこちらも2夜に渡ってオンエアされた『そして誰もいなくなった』
謎解き部分だけはかなり脚色されてしまったので若干の不満はある。

実は真犯人だけは犯罪を犯していなかった。原作ではそうなっている。しかも、以前にも書いたが真犯人の独白により稀有な犯罪の全貌は明らかになるのだが、私はそれを読み損ねてしまったため、『この本、謎解きしないで終わるんだ・・・』と母に感想を漏らしたところ、
『何言ってるの?』と一笑に付され慌ててそれを読む、というミスを犯してしまった。

ドラマでは真犯人も犯罪を犯しているという設定だ。そこはどうなんだろう。
また、謎解きのパートが長い。そして、真犯人が法では裁けない犯罪者を如何にしてピックアップできたか、これは割愛しないで欲しかった。原作を読んでいない人は首を傾げたくなるだろう。

それでも、最後の一人が「殺害される」までの経緯は驚くほど原作に忠実だった。
日本の、それも現代に設定を置き換えることも自然になされていて、クレジットで脚本家と監督を見て納得した。流石です。

豪華なキャストは誰一人無駄遣いされていなく、適材適所。設定も無理がない。
4時間弱があっという間だった。面白かった。
こういう良質なドラマをもっと見たいな。

ちなみに、渡瀬恒彦氏の遺作だそうだ。かなり病は進んでいたのだろうと思わせるくらい、滑舌が悪く、心なしか視点があっていないようにも見えたが、それも仕方のないことだったろう。

ご冥福をお祈りします。

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