都会のねずみには戻れない
―痩せると靴のサイズも小さくなるのか?
都会でのちょっとしたフォーマルな仕事に臨むにあたって、スーツを選んだまではいいが、合う靴がない。わざわざ買うのも勿体無い。
あ、ちょっと待った。いい靴があるじゃないの。そう、脳裏に浮かんだのは件のフェラガモ。
最後に足を入れてから10年が経過しているが、手入れだけはそこそこまめにしていたので状態は悪くない。
恐る恐る爪先を入れてみる・・・ん?あれ?緩く感じるぞ。
甲も当たらなければ、かかとにもやや余裕がある。これならもしかしたら大丈夫かもしれない。
ええい、ままよ!とばかりにフェラガモはキャリーへ収納された。勝負だ。のるかそるか(大げさな)。
・・・でも流石に怖いので、一応クッション性のあるソールで、歩きやすいが極めて地味なパンプスも緊急避難先として(!?)バッグに入れてその場に立った。
結論から言えば、全く足は痛くならなかった。約4時間、ほぼほぼ立ちっぱなしで、しかもちょこまかと動き回ったにも関わらず、だ。
あれほど私を苦しめた悪夢の靴、だったのに。これはやはりダイエットの効果なのだろうか。
考えられるのは、上体の重石が軽くなったので足にかかっていた負担が軽減された。うーん、甲とか足裏が痩せるとは考えにくいしやっぱりこれかなあ。
ちなみにスーツは9号。まあミセス向けのデザインだから多少は大きめなのだろうけれど、鏡に映った自分の姿は着やせしてすっきりと見えたからよしとしよう(何を?)
この靴が履けるようになったのはありがたい。これからも重宝しそうだ。
久々の都会は、気ぜわしく人が多く、地下鉄も初めて乗った路線だったからわかりにくく、駅をでて目的地に向かうにもまあランドマーク的に記憶していたビルやお店が悉く変わっていたり私の記憶があやふやだったり、と、更に当てにならない家人を連れて目的地までたどり着くのに一苦労。
初日に仕事を終え、二日目は家人の旧友を訪ねてから、偶然そのお宅の近所だった本社へ顔を出す予定だったのだが、旧友宅はかつて私が通っていた(というほどの頻回でもなかったけど)ディスコが入っていたビルのはす向かいだった。
それを最初からわかっていたらもっと簡単に着けたのに。要は私の調べ方が甘かったのだ。反省。
そのお宅から本社までは徒歩で10分程度、ほぼ直線でいけるはず。少々時間があったので道すがらにあったカフェで一休み。
頃合を見計らって店を出たはいいが、何故か出るはずのない大きな交差点に出てしまい、場所柄やたらと多い警官に尋ねても埒が明かない。そう、彼らは警護だけが任務なのでそこは責められないし、私のタブレットを見ながら3人であーだこーだしてくれただけでもまあ十分親切だったのだろう。結局、思いがけない細い道が正解だった。やれやれ。
本社で用事を済ませ、社長に社食でお昼をご馳走になって一路空港へ。
ラウンジでゆっくりする間もなく、あっという間に搭乗時間となり、お土産をゆっくり選ぶ暇もなく飛行機は北へ飛んだ。
帰宅は午後7時を回り、猫たちに文句を言われながら食事を用意し、ヒトの方は疲れきって食欲もないまま冷蔵庫の中にあった残り物をつまんで這う這うの体でそれぞれの寝室に入りバタンキュー(死語)。
もう私たちは完全に田舎のねずみなのだ。それを思い知らされた都会の一夜だった。
ここ数日、首が痛くて辛い。
立っていると首の痛みのみならず頭痛まで酷いが、横になると楽になる。まさか・・・いや、そんなことはないと思いたい。