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贖罪

9月14日
今日もお腹にしこりはなし。手術直後からわきの下にひとつある「コリコリ」が気にはなるが、ここは一度開いて確認してもらっているし、その時から大きくなってもいない。身離れ(?)がいいし大丈夫。うん。
馬肉のショップから、注文確認のメールが届いた。
以下引用。
アミノ酸バランスに優れた生肉であるため、
馬肉以外の肉を用いる必要はありません。
犬や猫のフードに、様々な肉類、食材を使用する必要は無いのです。
必要の無いことをすることは、リスクを拡大することになってしまいます。

…ここまで断言されるとムラムラと反骨精神がわきあがってくるのだけれど、ここまで断言できるのであればこそ信用してみようかな、とも思う。
でも、昨日ダウンロードさせていただいた計算表を使って、不足分はきっちり補うつもり。
明後日は通院日だ。何事もなく帰って来れますように。

我が家には、愛猫が発病する9ヶ月ほど前、やせこけて我が家の玄関先にたどり着いたところを保護した猫がいた。
どこか憎めない風貌で愛嬌があり、家に入れた直後からすぐに懐いてくれたその猫は、愛猫の闘病生活が幕を開けたと同時に私の実家がある街に住む妹夫婦の元へと預けられてしまった。
その理由のひとつは、愛猫と極めて相性が悪いこと-成猫の、それもメス同士は相容れないとは知っていたけれど、この2匹は凄かった。放っておいたらどれほどの大立ち回りを演じるか想像もつかないほどだったのだ。
どちらかと言えば、愛猫の方が新入りを苛めていたかもしれないが、突然の闖入者に彼女も多大なストレスを感じていたことは想像に難くない。ストレスは免疫力に悪影響を与えてしまう。
そして、もうひとつの理由。その猫はFIVのキャリアだったのだ。
キットによる検査だけでなく、確定診断を得るためにウエスターンブロット法でも検査をしていただいたが、間違いなく陽性。
私が在宅しているときだけは他の猫たちと一緒にしていた。目が行き届いてさえいれば、感染の原因となる「血を見るようなケンカ」は防ぐことができる。
でも手術後、傷口が完全にくっつくまでには2週間近くかかるらしい。万が一、万が一にも傷が開いているうちに2匹が止める間もなく争ってしまったら。そして、その結果愛猫がFIVに感染してしまったら。
かといって、全く隔離したままにしておくのはあまりに忍びない。なにしろその猫は、部屋に迎え入れた途端私の首っ玉にかじりついて離れようとしないのだ。途轍もない寂しがり屋でとてもひとりぼっちになどしておけない。
そこで考え付いたのが、術後2ヶ月程度の間どこかかわいがってくれそうなお家で預かってもらうこと、だった。
ちょうど一軒家を構えていて、なおかつ先住猫のいない妹夫婦に相談したところ、快諾…といかないまでも、愛猫を子猫の頃から知っていてかわいがっていてくれた妹は「期間限定猫飼い」になることを承知してくれた。
空輸、という手段を取ることになったので、最寄の空港まで運んでいく当日。
真新しいケージに入れられた猫は、始終落ち着かない様子で鳴き続け、貨物センターの窓口のすぐ前に車を止めたときには鳴き疲れたのか、声はもうかすれていて、途切れがちになっていた。
「ごめんね」
もう他の言葉が出てこない。
我が家の家猫として、多少不自由な思いはしつつ、それでもそれなりに幸せだったはずだ。捨てられてから、我が家にたどり着くまでどれだけひもじい思いを、怖い思いを味わってきたのだろうか。それなのに、今日はこれから未だかつて味わったことのない辛い経験を強いられる。私の容赦ない選択のために。
ごめんね。もう一度そう呟いて車から降りると、受付のカウンターにケージを載せた。
親切そうな若い係の男性がてきぱきと事務的に、それでも時折ケージに柔らかい目を向けながら手続きを進めていく。
「3675円になります」
何枚か書類にサインをし、お金を払っている間に小さなケージはカウンターの下にある台に移された。
「ごめんね」
もう一度囁きながらかがみこんでケージを覗き込んだ私は思わず息を呑んだ。
ケージの中で、カッパーの目が冷たくこう告げたのだ。
「私を捨てるくせに」
目の際で止まっていた涙がすっと引いていく。
「それでは、お預かりします」
明るくこう告げると係員は、ひょい、とキャリーを持ち上げ足早にカウンターの向こう側に消えていった。
2ヶ月。2ヶ月だけ待ってて。必ず迎えに行くからね。
前の晩、初めて一緒にベッドで寝たその夜に何度も繰り返し囁いて、彼女もうんうん、と頷いてくれた、と勝手に考えていたけれど、それが単なる自己欺瞞に過ぎなかったことに気付いたときはもう遅かった。
彼女は十二分に傷ついてしまった。また捨てられた、とその記憶に刻み込んでしまった。
でも今生の別れではないんだよ。本当に迎えに行くんだよ。また一緒に暮らせるよ。
いくら声に出してももう聞こえない。
それでも、もう一度だけ「待っててね」そう呟いて私は貨物センターを後にした。
あの寒い朝から半年。その猫は今も私の側にはいない。
続きはまた別の機会に。

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