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あの猫、その後

9月18日
お腹を触る度、背筋に冷たい緊張感が走る。これだけは最後の手術から明日で1ヶ月経つというのになくならない…って、ああ!もう1ヶ月経つんだ!
長い。短いけど、長い日々。1ヶ月が3ヶ月に、そして半年、一年、と過ぎて、いつか「完治」という言葉が馴染むようになるまで、きっとそれまで私は日に一度、緊張する時間を持つのだろう。
馬肉入りごはんにはあっさり馴染んでくれた。あとはキャットフードと肉の比率を変えていくプロセスだけ。だけ、ってこれが難しいんだけど。

妹夫婦に預けられた猫のその後。
初めて猫と一緒に暮らす時間のあれこれを、妹はオンラインの日記で教えてくれるようになった。
到着後体調を崩し、近所の病院で歯石取りやエコー検査などを受けたこと。
なかなか便が出なくて、レントゲンに写った便が腹水と間違われたこと。
そして、徐々に心を開いていく猫と妹夫婦との距離の縮まり具合が見ていて微笑ましかった。
このまま、彼女たちに託してしまおうか。
悪魔の囁き。そう、あの猫は愛されたがっている。でも我が家では既に女王様(?)がいて、どう間違っても一番、のポジションには付けない。
それなら、いっそ妹夫婦の愛猫として可愛がってもらったほうがいいのではないだろうか。
そう思う端から、私にしがみついて切なく鳴く声が耳元に甦り、これから先、ここまで私に夢中になってくれる猫が現れるだろうか、などど考えてしまう。
妹も、彼女の好みにぴったり-容姿も、懐っこい性格も-の猫なので、かなり愛着はわいているようだ。
でも、いずれ返す猫なのだから、あまり気持ちを寄せないようにしている、そう彼女が話すのを聞いてなんだか切なくなった。
送って、送り返される。あの猫はモノじゃない。
所用で実家のある街の近くへ行くことになったため、とりあえず妹夫婦の家に行こう。そしてもしあの子が覚えていてくれたら、そして許してくれたなら連れて帰ろう、と心に決めた。
そして出発を2週間後に控えたある日。愛猫のお腹を何気なく触っていて、指先が何か、を捉えた。
…しこり、だ。
大きさは米~小豆大といったところ。直感的に「再発だ」と気付く。
ドライバーである家人の都合がどうにもつかず、その数日後に病院へ行ったところやはり即時の手術を告げられた。
通院時間を考えればこのまま預けて手術してもらうのがベストだ。
抜糸は10日後になるとのこと。術後、抜糸までの間はカラーを装着しているのでそうなると泊まりで家を空けることはできない。でも手術を伸ばすのはこの状況では致命的とも思われた。
約束を違えてしまう。
愛猫にまた傷ができ、抜糸が終わっても傷が完全に綺麗にふさがるまでは迎えに行くことはできない。2ヶ月、という約束はこの時点で完全に反古にされた。ごめんね。本当にごめんね。
でも、これも神の啓示ではないだろうか。迎えにいけなくなるように運命が定められているのではないだろうか。
大げさではなくその時はそう思った。そして思ったまま、妹に頼んだ。あの子をもらってやってくれないか、と。
FIVキャリア、という大きなハンデを背負っていることも承知の上で厚かましくも頼んだのだが、少しの逡巡の後、妹夫婦は決断してくれた。
短い時間で既にいる猫たちの隙間を縫うようにして私の心の中に入り込んできた猫。人懐っこさでは右に出る猫はいないかもしれない、見た目にも綺麗なテリとツヤ(?)の猫。長い尻尾をピン!ピン!と立てていつもご機嫌な猫。
実際一緒に生活してしまったら妹夫婦も手放したくならないだろうことは正直予想がついていたので、これはこれで予定調和的な結末かもしれない。
でも話が決まったその夜、妹の日記に「とうとう正式にウチのコになりました」と書かれてあるのを見て涙が止まらなくなった。
引き返せない。もうあの子はここには戻ってこない。自分で言い出したことなのに何故こんなに胸が痛むのだろう。
廊下にしつらえられた専用のスペースを片付けながら、そこここに彼女の存在を見出してはため息をつく。そんな日々は1週間あまり続いた。
その間も妹の日記には、日に日に彼女たちの猫になっていく様が克明に記されていった。
そして今では二人を僕のように従えつつ我が物顔で家の中を飛び回っているそうだ。
狭いスペースで愛情を独り占めできずストレスをためてしまう-発症を近づけてしまう-よりも、今の生活の方が恵まれているのは間違いない。妹は強運の持ち主なので、きっとこの子は発症しないで天寿をまっとうするだろう。そんな予感がする。
あの猫がいなくなってふと気付くと愛猫が抱っこをせがむようになっていた。
あんなに抱っこが嫌いだったのに、今では抱き上げると自分から降りようとしなくさえなった。あの猫の分まで甘えてあげるわよ、とでも言うことなのだろうか。だとしたら素晴らしい置き土産だ。
短い間だったけど、楽しかったよ。本当にありがとう、のあ。

9月19日
今日もしこりは確認できず。

9月20日
同上。

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